【Advanced/Review】『東京命日』/ 島田虎之介 マンガレビュー
- Naoto

- 2020年5月29日
- 読了時間: 7分
更新日:2022年8月3日
There are English translations of the underlined words below.
[1]
みなさんこんにちはNaoto(尚人)です。
今回は僕の好きな漫画家の一人、島田虎之介さんの作品を紹介したいと思います。
今回紹介する漫画は「東京命日」です。
[2]
「東京命日」は島田さんの2作目の作品で2005年に単行本として発売されました。
島田さんの1作目のラストワルツを読んで以来、島田さんの作品を集めていこうと思っているので、最近2作目の東京命日を買いました。
[3]
島田さんの絵はとてもオリジナリティがあるイラストっぽい絵なので、ぜひ下のリンク先で見てみてください。トーンを使用していないのも特徴のひとつだと思います。
[4]
そして前作と外見が同じキャラクターが登場するのも特徴のひとつだと思います。
同一の作家が同じキャラクターを俳優のように扱い、異なる作品に様々な役柄で登場させる表現スタイルをスターシステムと呼ぶそうです。
wikipedia によるとこの手法を日本の漫画で初めて使った人は手塚治虫さんみたいです。
前作「ラストワルツ」と同じ職業のキャラクターもいますが、基本的には全く別の人物として出てきます。
そう考えると映画のようでもあり、島田虎之介さんの中のパラレルワールドのようでもあります。
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作品の構造も前作と似ていてさまざまなキャラクターの視点が存在し、全員が主人公と言えるような作品になっています。
ですが、第一話から最終話まで時間軸がばらばらに配置されているので前作よりかなり複雑な構成になっています。言い換えれば何回でも楽しめる作品になっています。
[6]
またキャラクター同士が実際に会ったりお互いの人生に影響を与え合っているのも前作とは違う点で、むしろそのことがこの作品の核になっていると思います。
[7]
前作同様、実在した人物の名も多数出てくるんですがキャラクターとしては出てこないです。
「東京命日」では主にアーティストや作家、ダンサーなどの名前や作品が出てきます。
映画監督の小津安二郎、劇作家の寺山修司、ピアニストのミケランジェリ、シンガーソングライターのケイトブッシュ、ダンサーのイサドラダンカンなどです。
その中でも小津安二郎はこの作品のスタート地点となるような存在で、
この作品の物語は、小津安二郎の命日にさまざまな人が彼のお墓がある円覚寺(えんがくじ)に集っているシーンから始まります。
[8]
お恥ずかしいことに僕は今まで小津さんの作品を1本も見たことがなかったので、これをいい機会だと思って今いろいろ見ています。
漫画の中に出てきた3本の映画、「東京物語」「東京暮色」「長屋紳士録」そしてあとがきに書いてあった「麦秋」をとりあえず見てみました。
どの作品も家族や親子のすれ違いなどがテーマで、この漫画ととてもリンクしていると思いました。
[9]
この漫画の中でも家族の愛やすれ違いが、あるときはいい思い出として、ある時はトラウマとして物語の随所に挿入されていて、各キャラクターの人生の重みがどんどん増していきます。
また漫画の中の小津ファンの外国人がドイツ人だというのもとても示唆的だと思いました。
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「東京命日」の物語はCM制作会社の社員やストリッパー、ピアノ調律師など一見まったく接点のない様々なキャラクターが複雑に絡み合いながら進んで行くんですが、バタフライエフェクトのように、ストリッパーのテーマ曲がCMの曲として使われたり、あるキャラクターがケーキを食べたくなった理由はすれ違った別のキャラクターの服にバニラエッセンスがついていたからだったりします。
このようなことは漫画の中ではわかりやすく説明されていないので、注意して読まないと気付かないと思います。
僕も一回読んだだけでは全くわかりませんでした。
ヒントだけは出して答えは言わない部分もあり、読者によって様々な解釈ができる作りになっていると思います。
[11]
こういうバタフライエフェクトのような演出からは、「僕たちが今この世界で同じ時間を
生きているのは当たり前なんかじゃなくものすごい数の奇跡の積み重ねの結果なんだ」というメッセージを感じ取れました。
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そして東京命日は、僕たちは思い出や亡くなった方の作品と一緒に生きているということも再認識させてくれました。
自分の人生に疑問を抱き続けているキャラクターが作品を通じて迷いを消したり、過去のトラウマから逃れられないキャラクターが作品を通じて人生を次のステップへ進める姿も描かれていて、芸術の力を示している側面もこの漫画にはあります。
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同じ作品を共有して命日に墓参りをしに人が集まることは、彼らが同じ歴史の上に生きていることを証明する神聖な現象かもしれないです。
歴史という縦の軸、今一緒に偶然生きているという横の軸。
その2つを1つの作品で表現しているものすごい濃度の漫画だと思いました。
[14]
ちなみに「東京命日」ですごいなぁと思ったテクニックは、ページをめくった時に、同じアングルで髪型だけを変えて時が経過しているのを表したり、ページをめくった時に人の影がボーリングのピンになったりする手法です。
映画やドラマではよくある手法だと思いますが、それをコマの配置によって読者に能動的に体験させているのはすごいなと思いました。
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単純にキャラクター1人1人の物語を楽しむのもいいですし、バタフライエフェクトの観点から楽しむのもおもしろいですし、この作品から感じる言葉にできない何かを確かめるために何度も読み返すのもいいと思います。
今は手に入りにくいんですがみなさんにもぜひ読んでみてほしいです。
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この動画のスクリプトとこの動画の中で使われた難しい単語の英訳も下のリンク先で見ることができますので、ぜひ見てみてください。
ではまた次回お会いしましょう。
じゃねぇ。
[1]
漫画家(まんがか) manga artist
作品(さくひん) work
命日(めいにち) death anniversary
[2]
~作(さく) counter for works
~目(め) [ordinal number suffix]
単行本(たんこうぼん) book [not magazine]
発売(はつばい)する release/sale
~以来(いらい) since~
[3]
オリジナリティー originality
イラスト illustration
っぽい(N3) -ish/-like
リンク先(さき) linked page
トーン screen-tone
使用(しよう) use
特徴(とくちょう) feature/characteristic
[4]
前作(ぜんさく) previous work
外見(がいけん) outward appearance/looks
登場(とうじょう)する appear (on the stage)
同一(どういつ)の the same
作家(さっか) author/writer/artist
俳優(はいゆう) actor
扱う(あつかう) deal with/handle
異なる(ことなる) differ/be different
様々(さまざま)な various
役柄(やくがら) role/part
表現(ひょうげん) expression
~によると(N3) according to~
手法(しゅほう) technique
職業(しょくぎょう) occupation/job
基本的(きほんてき)には basically
全く(まったく) really/truly/entirely
人物(じんぶつ) character/person
~として(N3) as(in the role of)~
そう考えると Considering this,/If you think so
~でもある also be~
[5]
パラレルワールド parallel world
構造(こうぞう) structure/construction
視点(してん) point of view/perspective/camera
存在(そんざい)する exist
主人公(しゅじんこう) protagonist/main character
第~話(だい~わ) episode ~
最終話(さいしゅうわ) last episode
時間軸(じかんじく) time line
ばらばらに inconsistently/discretely
配置(はいち)する arrange/allocate
かなり pretty/fairly/a lot
構成(こうせい) construction/composition
言い換えれば(いいかえれば) In other words,
[6]
~同士(どうし) among~/between~
実際(じっさい)の[に] actual[ly]
人生(じんせい) (human) life/one’s life
影響(えいきょう) influence/effect
ます形+合う(あう) do~to each other/do~together
点(てん) point/dot
むしろ or rather/actually
核(かく)[↑尾高] the core
[7]
実在(じつざい)する really exist
多数(たすう) a great many/a lot
監督(かんとく) director/manager
劇作家(げきさっか) playwright/dramatist
地点(ちてん) spot/point/site
存在(そんざい) existence
物語(ものがたり) story
墓(はか) tombstone/grave
集う(つどう) gather/come together
[8]
~ことに(N3) to my~/~ly [emphasize speaker’s feelings]
本(ほん) counter for movies
機会(きかい) chance/opportunity
暮色(ぼしょく) twilight/dusk
長屋(ながや) row house
紳士(しんし) gentleman
あとがき afterword
麦秋(ばくしゅう) Early summer
どの~も every~
すれ違い(すれちがい) to grow apart/misunderstanding
テーマ theme
リンクする link
[9]
ある時(とき)は at one point/sometime
思い出(おもいで) memory/recollections/reminiscence
トラウマ trauma
随所(ずいしょ)に here and there/at every turn
挿入(そうにゅう)する insert
各(かく)~ each~
重み(おもみ) weight/importance
どんどん rapidly/faster
増す(ます) increase/grow
示唆的(しさてき)な suggestive/pregnant
[10]
CM(しーえむ) commercial
制作(せいさく) production/creation/work
社員(しゃいん) employee/staff
ストリッパー stripper/stripteaser
調律師(ちょうりつし) piano tuner
一見(いっけん) at first glance
接点(せってん) contact/point of contact/point in common
絡み合う(からみあう) be intertwined
進む(すすむ) proceed/advance/pass
バタフライエフェクト butterfly effect
曲(きょく) tune/music/track
すれ違う(すれちがう) pass by one another/walk past
バニラエッセンス vanilla extract
説明(せつめい)する explain
注意(ちゅうい)する be careful/pay attention
気づく(きづく) notice/find/realize
ヒント hint/clue
答え(こたえ) answer
部分(ぶぶん) part/section
読者(どくしゃ) reader
~によって(は) depending on~
解釈(かいしゃく) interpretation
作り(つくり) build/structure/format
[11]
演出(えんしゅつ) production/direction
当たり前(あたりまえ)の ordinary/natural
~なんか(N3) things like~ / something like~
ものすごい terrible/frightful/super
奇跡(きせき) miracle/wonder
積み重ね(つみかさね) accumulation/pile/heap
結果(けっか) result/outcome
感じ取る(かんじとる) perceive/sense/feel
[12]
亡くなる(なくなる) pass away/die
方(かた) person (polite form)
再認識(さいにんしき)する realize again/reaffirm
疑問(ぎもん) question/doubt
抱く(いだく) hold/have
~を通じて(つうじて) through~
迷い(まよい) hesitation/doubt/ambivalence
消す(けす) delete/erase/put out
過去(かこ) past
逃れる(のがれる) escape/flee/evade
ステップ step/phase
姿(すがた) stance/state/appearance/figure
描く(えがく) draw/paint/depict
芸術(げいじゅつ) art
示す(しめす) indicate/show
側面(そくめん) side/aspect
[13]
共有(きょうゆう)する share/have jointly
墓参り(はかまいり) to visit to a grave
歴史(れきし) history
証明(しょうめい)する prove/testify
神聖(しんせい)な sacred
現象(げんしょう) phenomenon/happening
縦(たて) vertical
軸(じく) axis/center
偶然(ぐうぜん) by chance/by coincidence/by accident
横(よこ) horizontal (as opposed to vertical)
濃度(のうど) density/concentration/thickness
[14]
ちなみに as a side note/by the way
ページをめくる turn a page
アングル angle
髪型(かみがた) hairstyle
経過(けいか)する pass/lapse
表す(あらわす) express/show/signify
影(かげ) shadow
ボーリング bowling
ピン pin
よくある frequently used/common
コマ panel/frame[in manga]
配置(はいち) layout/location/position
~によって(N3) by means of
能動的(のうどうてき)に actively
体験(たいけん)する experience
[15]
単純(たんじゅん)に simply
観点(かんてん) point of view/standpoint/perspective
言葉にできない that cannot be expressed in words
確かめる(たしかめる) ascertain/check/make sure
読み返す(よみかえす) read again/reread
手に入る(てにはいる) get/become available
[16]
動画(どうが) video
スクリプト transcript/script
英訳(えいやく) English translation
リンク先(さき) linked page
お会い(おあい)する see/meet[polite form]



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