漫画『ZERO』レビュー 松本大洋/Taiyo Matsumoto
- Naoto

- 2020年8月25日
- 読了時間: 6分
更新日:2022年8月3日
There are English translations of the underlined words below.
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みなさんこんにちはNaotoです。
今回は僕が好きな漫画を紹介したいと思います。
今回紹介する漫画は松本大洋さんの「ZERO」です。
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松本大洋さんは「ピンポン」や「鉄コン筋クリート」を描いた漫画家で日本のみならず、海外でも注目されています。
最近ではアメリカの漫画賞のアイズナー賞で松本大洋さんの作品「ルーヴルの猫」が最優秀アジア作品賞を受賞しました。
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今回紹介する「ZERO」は松本さんの初期の作品で1990年から連載が始まっています。
表紙を見てもわかるようにボクシングを題材にした漫画で、上巻と下巻があります。
あらすじを簡単に説明すると、
主人公は五島雅(ごしまみやび)というもうすぐ30歳になる無敗のボクシングチャンピオンで最強のボクサーなんですが、その彼は自分を満足させられる壊れないおもちゃをずっと探しています。
そしてメキシコの最強ボクサー、トラビスを見つけ、闘うことになるというストーリーです。
ここまでの話が上巻で、下巻はずっとトラビスとの試合が描かれます。
タイトルの「ZERO」は五島のあだ名で負けた試合の数がゼロなので「ゼロ」と呼ばれるようになったみたいです。
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描かれているテーマは少年誌のスポーツ漫画とは一線を画していて、友情や努力は描かれていません。
五島はリングの上でしか生きられない哀れな存在として描かれていて、孤独や悲哀がこの作品全体を覆っています。勝利すらこの漫画の中では不幸なものとして描かれていると思いました。
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そして「花」という言葉もこの作品の重要なキーワードになっています。
物語は五島の「花だ」という独り言から始まり、1ページ目で五島が来ているガウンにも大きく花が描かれています。
第二話では「花ってのは散るから綺麗なんだろ。」と訪れた記者に五島が語っているシーンがあり、いつまでも勝ち続けている自分とは対照的な存在として花を見ている五島が描かれています。
そのシーンでは五島の花に対する憧れや花のように生きることへの憧れが垣間見えます。
この物語の第1話のタイトルは「造花」なんですが、いつまでも勝ち続けている五島を最も残酷に言い表した言葉といえます。
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もちろん他にも物語を構築する重要なキャラクターがたくさん出てきて、五島との関係や五島に対する複雑な感情が描かれています。
その中の一人の荒木は五島のトレーナーで、五島に対する信頼や誇りはもちろんあるんですが、五島を育てたことを後悔しているようなシーンも出てきます。
そのシーンでは怪物を生み出してしまったフランケンシュタインの苦悩を思い出しました。
ですがフランケンシュタインとは決定的に違っていて、それは五島を哀れみつつも幸せを願っているというところです。
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試合に勝っても孤独が続き、負けて引退しても何もすることがない最強ボクサー。
そんな五島にメキシコの最強ボクサートラビスが何をもたらすのか。
読み終えた後はこの漫画のタイトル「ZERO」に悲しい意味が含まれていることに気づきました。
守るべきものがなくても、一緒に高みを目指すライバルがいなくても、世界には様々な「1」が溢れているので、五島にはその「1」をいつか見つけてほしいなと思いました。
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もちろん絵やコマ割りもめちゃめちゃかっこいいです。
キャラクターが一番かっこよく見えるポーズを選ぶセンスは初期の作品から顕在で、それを写すカメラの位置も変幻自在です。
第1話ではフラッシュバックが使われていて映画っぽくなっているので下のリンク先で見てみてください。
特に印象に残っているコマはトラビスがスパーリング相手を倒してニュートラルコーナーに戻るシーンを天井のファンの上から撮ったコマです。
あと、リングを魚眼レンズで撮ったようなコマも大好きです。
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スタイリッシュな絵やかっこいいセリフとともに奥深いストーリーをこのゼロでは味わえます。気になった方はぜひ読んでみてください。
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これからも僕の好きな漫画を紹介したり漫画の中に出てきた日本語を紹介したりしたいと思います。
この動画のスクリプトと今回使った難しい単語の英訳も下のリンク先で見ることができますので、ぜひ見てみてください。
ではまた次回お会いしましょう。
じゃねぇ。
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[1]
今回(こんかい) this time
紹介(しょうかい)する introduce/present
[2]
漫画家(まんがか) manga artist
~のみならず(N2) not only~
海外(かいがい) overseas/foreign countries
注目(ちゅうもく)する pay attention/take notice
賞(しょう) award/prize
作品(さくひん) work
最優秀(さいゆうしゅう) the best/the highest
受賞(じゅしょう)する win (a prize)
[3]
初期(しょき) early days
連載(れんさい) serial publication
表紙(ひょうし) cover/front cover
~ように as~
題材(だいざい) subject matter/theme
上巻(じょうかん) first volume (in set)
下巻(げかん) last volume (in set)
あらすじ synopsis/plot/summary
主人公(しゅじんこう) protagonist/main character
もうすぐ soon
無敗(むはい)の undefeated
最強(さいきょう)の the strongest/best
満足(まんぞく)する be satisfied/be content
おもちゃ toy
闘う(たたかう) fight/battle/combat
試合(しあい) match/game
描く(えがく) draw/paint/depict
あだ名(な) nickname
[4]
テーマ theme
少年(しょうねん) boy/juvenile
少年誌(しょうねんし) shounen magazine
一線を画す(いっせんをかくす) be completely different/draw a line between A and B
友情(ゆうじょう) friendship/fellowship
努力(どりょく) effort/endeavor
哀れ(あわれ)な pitiful/miserable
存在(そんざい) existence
~として(N3) as(in the role of)~
孤独(こどく)な solitude/loneliness
悲哀(ひあい) sorrow/grief/sadness
~全体(ぜんたい) the whole~
覆う(おおう) cover
勝利(しょうり) victory/triumph/win
~すら(N1) even~
不幸(ふこう)な unhappy/unfortunate
[5]
重要(じゅうよう)な important
キーワード keyword
物語(ものがたり) story
独り言(ひとりごと) talking to oneself
~目(め) [ordinal number suffix]
ガウン gown/boxing robe
第~話(だい~わ) episode~
散る(ちる) fall/scatter
語る(かたる) narrate/tell/talk
いつまでも forever/the whole time
対照的(たいしょうてき)な contrastive/opposite
~に対する(たいする) toward~/on~
憧れ(あこがれ) adoration/yearning
垣間見る(かいまみる) have a glimpse of
タイトル title
造花(ぞうか) artificial [imitation] flower
残酷(ざんこく)な cruel/brutal/merciless
言い表す(いいあらわす)/言い表します describe/express
[6]
構築(こうちく)する construct/build
関係(かんけい) relation(ship)/connection
トレーナー trainer
信頼(しんらい) trust/confidence
誇り(ほこり) pride
育てる(そだてる) raise/rear/bring up
後悔(こうかい) regret/remorse
怪物(かいぶつ) monster
生み出す(うみだす) create/produce/generate
苦悩(くのう) distress/anguish
決定的(けっていてき)に definitely/absolutely
憐れむ/哀れむ(あわれむ) pity/have pity on/sympathize with
~つつも(N2) even though~/while~
幸せ(しあわせ) happiness
願う(ねがう) wish/hope
[7]
引退(いんたい)する retire
もたらす bring/bring about
含む(ふくむ) contain/have/include
~べき(N3) must~/should~
高み(たかみ) a high place
目指す(めざす) aim for/at
高みを目指す aim high
ライバル rival
様々(さまざま)な various
溢れる(あふれる) overflow/flood/be inundated
いつか sometime/someday
[8]
コマ割り(わり) panel layout
めちゃめちゃ totally/absolutely
かっこいい cool
ポーズ pose
センス sense/taste
顕在(けんざい)する be tangible/clearly exist
写す(うつす) film/photograph/take (a picture)
位置(いち) location/position/place
変幻自在(へんげんじざい)の phantasmagoric/kaleidoscopic
フラッシュバック flashback
っぽい(N3) -ish/-like
リンク先(さき) linked page
特に(とくに) especially/particularly
印象(いんしょう) memory/impression
残る(のこる) be left /remain
スパーリング sparring
相手(あいて) one’s opponent/partner
倒す(たおす) defeat/beat
ニュートラルコーナー neutral corner
天井(てんじょう) ceiling
ファン fan
撮る(とる) shoot/record (video, audio)/make (a film)
リング ring
魚眼レンズ(ぎょがんれんず) fisheye lens
[9]
スタイリッシュな stylish
セリフ line/phrase
~と共(とも)に together with~
奥深い(おくぶかい) deep/profound
味わう(あじわう) taste/enjoy
気になる be curious/be interested
方(かた) person(polite form)
[10]
スクリプト transcript/script
英訳(えいやく) English translation
リンク先(さき) linked page
次回(じかい) next time
お会い(おあい)する see/meet[polite form]



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