漫画『鉄コン筋クリート』レビュー 松本大洋/Taiyo Matsumoto
- Naoto

- 2021年5月12日
- 読了時間: 8分
更新日:2022年8月3日
There are English translations of the underlined words below.
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みなさんこんにちはNaotoです。
今回は久しぶりに僕の好きな漫画を紹介したいと思います。
今回紹介する漫画は松本大洋さんの「鉄コン筋クリート」です。
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まずは wikipedia に頼りながら簡単に作者と作品紹介をしたいと思います。
「鉄コン筋クリート」は僕の大好きな漫画家松本大洋さんの作品で、1993年から94年にかけて連載していました。松本さんは実写映画化やアニメ化もされた「ピンポン」も描いているんですが、「鉄コン筋クリート」は「ピンポン」の一つ前の作品になります。
「鉄コン筋クリート」という名前は松本さんが小さい頃、鉄筋コンクリートを間違えて鉄コン筋クリートと言っていたことからとったみたいです。
鉄コン筋クリートは2006年にアニメ映画化もされていて、僕は映画を見てから漫画を読みました。
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ストーリーをすごい簡単に説明すると、宝町(たからちょう)という町に住むクロとシロという子供がその町を開発するためにやってきたヤクザのグループと戦うという話です。
絵のスタイルはかわいい感じなんですが、残酷な描写がところどころ出てくるので最初に見たときはそのギャップに驚かされました。
主人公を変えれば十分ヤクザ漫画として成立するようなストーリーだと思います。
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主人公のクロとシロは親を持たず、廃車の中で寝てカツアゲやスリをして暮らしているいわゆる非行少年です。クロは好戦的でしっかり者という感じなんですが、シロはいつも穏やかで平和な世界を妄想しているとても純粋な子供です。
2人は何の組織にも属さず、ただ生きるために生きている野生動物のような暮らしをして
いて、警察からはネコと呼ばれています。
そして二人はその野生と自由を体現するかのように飛びます。
驚異的なジャンプ力で縦横無尽に町中を飛び回り、電柱の上から町を見下ろす姿はダークヒーローのようにも見えます。
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なぜ2人は羽もないのに飛べるのかということを考えた時、必然的に、「重力から解放されているから」という答えが出てくるかと思います。それはそのまま社会的な立場やしがらみ、責任、周りの目、そして物欲からの解放を表していると言えるかもしれません。
また、クロとシロという名前からもわかる通り、作者が2人に概念的な役割を与えているからこそ超人的なキャラクターとして描いているのかなぁとも思いました。
実際に物語の中盤では朝夜兄弟という子供が出てくるんですが、その2人も少し飛ぶことができます。
概念的な名前を持っているという点で、五十嵐大介さんの「海獣の子供」に出てくる二人の少年「海」と「空」もそれに当てはまると思います。ですが、「海獣の子供」のふたりはどこか人間離れしていて自然や宇宙全体の使者というようなイメージに対して、クロとシロはもっと町全体と調和していて怒りや幸福感を素直に表に出すので、人間の温かさをちゃんと持っている印象があります。
そういう意味では手塚先生の作品の、都会をさまよう芸術の女神を描いた漫画「ばるぼら」に近いかもしれません。
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中盤まではそんなクロとシロの誰にも邪魔されない自由な生活やヤクザとのバトルが楽しめるんですが、後半になると徐々にシリアスな展開になり、ストーリーそのものも抽象的で奥深くなっていきます。
クロとシロの一人の人格を二分したような相反する性格からは人間の二面性がテーマの中に含まれていることが想像できるんですが、後半からラストにかけては、理想主義と現実主義、楽観主義と悲観主義、愛と暴力、闘争と逃避などあらゆる二項対立がストーリーを通じて描かれていると思いました。
今回読み返したときは「海獣の子供」の「海」と「空」がまず頭をよぎったんですが、人間の二面性という意味では萩尾望都さんの「半神」と共通している部分があるなぁと思いました。
この「半神」は人間の二面性をそのまま具象化したような設定で、名作と言われているので興味がある方はぜひ下のリンク先で試し読みをしてみてください。
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終盤ではピンチに陥ったクロの前に伝説のガキと言われている「イタチ」が現れ、クロを救います。
このキャラクターもいろいろな解釈が可能で作品全体を奥深くしている重要な要素だと
思います。
ウィキペディアのキャラクター紹介には「クロが創り上げた幻覚でもう一人のクロ」と書いてあるんですが、それ以外にも人それぞれいろいろな解釈ができると思います。
イタチは偽善を憎み「闇の中にこそ真実がある」と言っているので、悲観主義や虚無主義を具現化した存在と捉えることもできると思いますし、人類全体の負の感情が集積したものとして捉えることも出来ると思います。
個人的にはジョジョのスタンドやファイトクラブのタイラーダーデンも思い出しました。
イタチやストーリー全体に対していろいろな解釈ができるので何度読み返しても飽きない作品だと思います。
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未来に悲観して世界の闇ばかりを見ていたら心は虚無と孤独に支配されてしまうが、その中に小さな希望を見つけることができれば平和で安心できる光に満たされた世界を想像できる。
そして、希望や絶望などのあらゆる概念、感情、あらゆる生物は確かに無から生まれたもので、ただそこにあるだけでこの宇宙の豊かさを証明している。
作品全体や最後のエンディングからはそんなメッセージをもらいました。
映画もとてもおもしろかったんですが、漫画は一枚一枚の絵をじっくり楽しめるので興味がある方はぜひ漫画も読んでみてください。
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これからもときどき僕の好きな漫画を紹介していきたいと思います。
この動画のスクリプトとその中で使われた難しい単語の英訳も下のリンク先で見ることができますのでぜひ見てみてください。
ではまた次回お会いしましょう。
じゃーねー。
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[2]
頼る(たよる) rely on/depend on/use
作者(さくしゃ) author/writer/drawer
作品(さくひん) work
~にかけて through/from-till-
連載(れんさい)する serialize
実写(じっしゃ) live-action
~化(か)する make things into~
鉄筋(てっきん)コンクリート reinforced concrete/ferroconcrete
[3]
開発(かいはつ)する develop/create
やって来る come (along)/arrive
残酷(ざんこく)な cruel/brutal/merciless
描写(びょうしゃ) description/depiction/content
ところどころ here and there/some parts
ギャップ gap
主人公(しゅじんこう) protagonist/main character
~として(N3) as(in the role of)~
成立(せいりつ)する be organized[formed]/be concluded/be approved/be valid
[4]
廃車(はいしゃ) disused car
カツアゲする threaten and rob (a person of money)/mug (a person)
スリ pickpocket
暮らす(くらす) live/spend (time)
いわゆる what is called/so-called
非行(ひこう) misconduct/delinquency
好戦的(こうせんてき)な belligerent/aggressive
しっかり者(もの) relabel person
穏やか(おだやか)な calm/gentle/quiet
平和(へいわ) peace
妄想(もうそう) delusion
純粋(じゅんすい)な pure/innocent
組織(そしき) organization
属す(ぞくす) belong to
~ず ≒ ~ないで
ただ only/simply
野生動物(やせいどうぶつ) wild animals
野生(やせい) wild/growing wild
体現(たいげん)する embody
~かのように(N2) as if~/just like~
驚異的(きょういてき)な surprising/marvelous
~力(りょく) power/strength/ability
縦横無尽(じゅうおうむじん) freely/right and left
飛び回る(とびまわる) fly around [about]
電柱(でんちゅう) utility pole
見下ろす(みおろす) look down/overlook
姿(すがた) appearance/figure
[5]
羽(はね) wing/feather
必然的(ひつぜんてき)な inevitable/necessary
必然的(ひつぜんてき)に naturally/inevitably/automatically
重力(じゅうりょく) gravity
解放(かいほう)する release/liberate
そのまま directly
社会的(しゃかいてき)な social
立場(たちば) situation/position/standpoint
しがらみ obstacle(s)/bondage
責任(せきにん) responsibility
物欲(ぶつよく) materialistic desires
表す(あらわす) express/show/signify
~通り(~とおり)N3) in the same way as~/as~
概念(がいねん) general idea/concept
概念的(がいねんてき)な general/conceptual
役割(やくわり) part/role
与える(あたえる) give/present
~こそ(N3) the very~[emphasis]
超人的(ちょうじんてき)な superhuman
描く(えがく) draw/describe/refer
実際(じっさい)の[に] actual[ly]
物語(ものがたり) story
中盤(ちゅうばん) middle stage
海獣(かいじゅう) marine mammal
当てはまる(あてはまる) apply/be applicable/come under
どこか somehow
人間離れ(にんげんばなれ)している superhuman/godlike
自然(しぜん) nature
宇宙(うちゅう) the universe/space
~全体(ぜんたい) the whole~
使者(ししゃ) messenger/envoy
~に対して(たいして) in contrast with/While~,
調和(ちょうわ)する be in harmony (with)/harmonize
怒り(いかり) anger/rage
幸福感(こうふくかん) feeling of happiness
素直(すなお)に frankly/without objecting [protesting]
表に出す show emotion
ちゃんと properly/regularly/perfectly/steadily
印象(いんしょう) impression
彷徨う(さまよう) wander/stray
芸術(げいじゅつ) art
女神(めがみ) goddess
[6]
後半(こうはん) latter half/second half
徐々(じょじょ)に gradually/slowly
展開(てんかい) development/progressing/scene
そのもの (in) itself
抽象的(ちゅうしょうてき)な abstract
奥深い(おくぶかい) deep/profound
人格(じんかく) character/personality
二分(にぶん)する divide in two
相反する(あいはんする) be opposed (to)/run counter (to)
性格(せいかく) character/personality
二面性(にめんせい) dual nature/two-facedness/two-sidedness
含む(ふくむ) contain/have/include
想像(そうぞう) imagine
理想主義(りそうしゅぎ) idealism
現実主義(げんじつしゅぎ) realism
楽観主義(らっかんしゅぎ) optimism
悲観主義(ひかんしゅぎ) pessimism
愛(あい) love
暴力(ぼうりょく) violence
闘争(とうそう) fight/conflict
逃避(とうひ) escape/evasion
あらゆる all/every
二項対立(にこうたいりつ) dichotomy
~を通じて(つうじて) through~
読み返す(よみかえす) read again/reread
よぎる go by/cross/pass by/float across
共通(きょうつう)する be common/have common with
部分(ぶぶん) part/section
具象化(ぐしょうか)する embody
設定(せってい) setting/background
名作(めいさく) masterpiece
リンク先(さき) linked page
試し読み(ためしよみ) trial reading
[7]
ピンチ pinch/predicament
陥る(おちいる) fall into
伝説(でんせつ)の legendary
餓鬼(がき) brat
現れる(あらわれる) appear/be expressed
救う(すくう) save/rescue
解釈(かいしゃく) interpretation
可能(かのう)な possible/practicable
重要(じゅうよう)な important
要素(ようそ) factor/element
作り上げる/創り上げる(つくりあげる) make up/build up
幻覚(げんかく) hallucination
もう~ another~
人それぞれ(ひとそれぞれ) each to their own
偽善(ぎぜん) hypocrisy
憎む(にくむ) hate/detest/have a hatred
闇(やみ) darkness/dark side
真実(しんじつ) truth/reality
虚無主義(きょむしゅぎ) nihilism
具現化(ぐげんか)する embody
存在(そんざい) existence
捉える(とらえる) grasp/perceive/seize/consider
人類(じんるい) mankind/humankind/the human race
負(ふ) negative/minus
感情(かんじょう) emotion/feeling
集積(しゅうせき)する accumulate/pile up
個人的(こじんてき)には personally
~に対して(N3) to~/on~/towards~
飽きる(あきる) get tired
[8]
悲観(ひかん)する be pessimistic
虚無(きょむ) nothingness/nihility
孤独(こどく) solitude/loneliness
支配(しはい)する rule/control
希望(きぼう) hope/wish
光(ひかり) light
満たす(みたす) fulfill/satisfy
絶望(ぜつぼう) despair
確かに(たしかに) surely/certainly
無(む) nothing
豊か(ゆたか)な rich/wealthy/abundant/plentiful
証明(しょうめい)する prove/testify
じっくり slowly/carefully
[9]
スクリプト transcript/script
英訳(えいやく) English translation



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